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山仕事のしかた
山の値段
伐採量・需要・造林面積
恐慌〜戦争〜復興〜高度経済成長 低成長時代に突入 これからの課題
 
地元が語る二ツ井の今  


佐藤力支所長(白神森林組合二ッ井支所長)
 
 
  白神森林組合二ツ井支所長の佐藤力支所長
   
この方にお聞きしました

二ツ井の民有林の管理をする森林組合の佐藤力支所長。民有林所有者の利益を尊重しつつ、地域の自然や林業を持続していくにはどうしたらよいのか、聞いてきました。
     
 

 
   私どもの白神森林組合は、平成6年の広域合併によって能代・山本郡に5つあった森林組合がひとつにまとめられて生まれた組合です。二ッ井町内の民有林所有者900人あまりが加入しています。

 令級でいえば、まもなく伐採可能な時期がめぐってきます。 ただし、伐っていい材が取れるかは、間伐の成果次第。そのためには今、間伐をがんばって進めないと、と思っています。
 
 
二ツ井町の民有杉林の面積の令級別内訳。あと10年経てば、3寸ぐらいの芯持ち柱なら取れる級になる山林が主流となる。ただし、今、間伐をきちんとすれば、の話  
(二ツ井町森林整備計画 平成9年発行版 秋田県二ツ井町)  
 
 ただし、私たちの立場としては、組合員からの依頼によって、森林の手入れや伐採をする、というのが原則です。最近では、声がかかるのを待つのではなく、「今あなたの山はこういう状態なので、そろそろ間伐しませんか」などとこちらから提案をしていくことに力を入れています。材木価格の下落から林業が低迷している今、間伐されずに放置されている山林が多いため、国でも県でも間伐を促進するための手厚い補助金をいくつか用意しています。それをうまく利用すれば、個人負担がうんと少なくて間伐をしてもらえるので、山から木を出しても利益にならない今のような状態でも、間伐を勧めやすくなりました。

国の特定間伐促進事業の内容(平成12年度より)
面積 他の所有者と共同でつくる30ha以上の団地
林令 16年生〜45年生(従来は35年生までだった)
期間 平成12年〜16年
補助率 標準事業費の72%を国と県がもつ
種類 切り捨て間伐、搬出間伐
(白神森林組合発行のちらし「守ろう緑育てよう宝の山」より)

 この二ツ井は、米代川流域の中でももっとも間伐の実施が必要なところと、県から指定されています。 二ツ井町でも平成10年から5カ年計画で間伐目標をたてています。平成11年度の間伐面積は494ha。目標面積の949haの52.1%という進捗率です。まだまだこれから進めていく必要があります。

 
秋田県資料による、米代川流域市町村の平成11年度間伐実績と、緊急間伐団地設定。二ツ井は間伐実績面積も多く、かつ、平成12年度には11団地645haの緊急間伐を達成、平成13年度にも5団地200haを設定している。  
(秋田県林業政策課造林班製作資料より)  





 
   間伐をしたあと、間伐材を市場に出すかどうか、という判断はむずかしいところです。間伐したあと、そのまま山に置いてくるいわゆる「切り捨て間伐」の方が、搬出の手間がない分、経費がかからない。市場に出して売ってみて、搬出する分割高になる経費をカバーできるかどうか、売ってみないと分からないという現状ですので。

 基本的には、組合員にとってリスクが少ない方を選びますので、およそ30年生よりも前の木であれば切り捨て、40年〜45年生で市場に出してみてどうかな、といったところです。組合員さんに間伐の提案をする時には、経費、補助金の額、市場売りの予想価格を元に見積書を出すのですが、「いい材が取れた場合」と「いい材が取れなかった場合」との2通りを用意し、その2つの幅の中で合意を取り付けています。

 「いい材」というのは、製材所で使っている量産体制の機械にかかる寸法に合う、まっすぐな材であるか、という意味です。機械にかからないのでは、チップにしてしまわなければならないので、これはもう、ただ同然です。どっちに転ぶか、それは伐ってみないと分からないことです。ちょっとでも曲がっているとダメですからねえ。農林規格より製材所の機械の方がよっぽど厳しいです。どんな木が出るか、現場を見ればある程度分かりますけれど、それだけの調査費もかけられませんしね。




 
   簡単な一例をあげて説明しましょう。

  生産経費+販売経費 補助金額 自己負担金
切捨ての場合 170,000円 121,000円 49,000円
搬出の場合 298,000円 213,000円 85,000円
(白神森林組合平成13年2月提供資料より)
 
間伐材。この利用価値が高まることが、質のよい成熟林形成のために、必須  
   






 出荷する場合には、切り捨て間伐と比べて、搬出費用がかかる分、作業経費はかさみます。補助金も増えるのですが、自己負担金の額は大きくなります。ただし、この85,000円は、間伐材を売ることによって回収していくことも、できます。

 売ることで、どれだけプラスに転じることができるかどうか。せめて、持ち出しがないようにはしたいところです。
製材所の機械を通る径級が14cm 以上。立米13,000円ぐらいで引き取られるのが相場ですから、まあ、7立米以上出れば自己負担はしないで済む計算になります。

 1ha 間伐して、材として出せる径級で出てくるのは、平均的にいって10〜15立米。まあ、そのうち、ものすごくうまく見積もって14立米が13,000円で売れたとしましょうか。これで売り上げが182,000円、収支でいえば97,000円のプラスになります。これがいい方の見積もり。悪い方でいって、10立米しか売れなかったとしたら、売り上げが130,000円、収支はプラス45,000円です。

 プラスとして手元に入るのは、補助金が出ていても、こんなものです。間伐材の値段はどんどん下がっていますから、もっと悪い数字にもなりかねません。多少のプラスとはいっても、植林、地ごしらえ、下刈り、枝打ちと、それまで造林にお金をかけてきたことを思えば、マイナスですよね。

  去年からはじまった緊急間伐事業では、補助の対象を35年生から45年生にまで広げ、補助も手厚くなっています。秋田県の場合、間伐が必要となる面積はスギ人工林の半分以上にもなるので、かなり大変なのですが、毎年、要間伐面積を割り出し、年々達成率はあがってきています 。
 


(秋田県林業政策課造林班製作資料より)
 
 
林道の整備、補助金の利用などで、間伐実質率をあげる努力をしている。  
(秋田県林業政策課造林班製作資料より)  






  補助制度をうまく使いながら、組合員さんひとりひとりに、「あなたのところを間伐すればこうなりますよ」というシミュレーションをし、合意が得られれば、やる、というのが私たち事務方の仕事です。秋田県全体もそうですが、保有規模が零細で、1ha 以下の方がほとんどなので、ひとりひとり対応していくのに、毎日追いつかないような情況です。




 
 
山の管理を森林組合に委託するための契約。植栽から保育、伐採に至るまで、林業経営をトータルにサポート。経営の判断を組合に任せるかわりに、事業経費以外に管理手数料を負担する。  
(白神森林組合発行のちらし「守ろう緑育てよう宝の山」より)
 
 しかもその上問題になるのが、不在地主の組合員の山林です。組合からはおたよりなどをいつもお送りしますが、「田舎におやじが遺した山がちょっとあるらしいんだけれど、どんなもんなんだか知らないなあ、大した面積でもないしな」と、自分ごとでない方も多いんです。そういう方のために「長期施業委託契約」という制度を用意しています。

 これは、毎年組合の方でその方の山林を調査して概況をおしらせするもので、1ha 未満で年間1万円かかります。安いといえば安いんでしょうけれど、関心のない方には、もともとどうでもいいことのようで、結局、ある程度山に関心をもっている人にしか支持されていません。本来のねらいはそうではないのですが・・・





 
 
もやしの木のようになってしまった杉林は、土壌が弱くなる  
   
 
日が入らず、葉が赤く枯れてしまった  
   
 木を出して売る、ということだけでなく、治水治山、二酸化炭素の固定など、山林が健全な状態に保たれることで環境が守られるという「公益的機能」が、最近重視されるようになってきました。ところが実態としては、町に900人もいる山林所有者の中で、自分の持っている山について間伐をしようかどうしようか、などと考えるのはほんの一部で、ほとんどはそのままほったらかし、ひどい場合には自分の山林の境界さえ分からない人もあるほどです。これでは、いくら県や国が手厚く間伐補助を出しても、山の荒廃は避けられません。

 自分の山に関心のない人の山林、それでも手入れしなければ、環境保全には悪影響がある。そのような山林が点在しているので、管理する方の効率もとても悪いのです。本音をいえば、所有権はそのままいじらないでも、土地の上に生えている木に対して手入れすることについては、森林組合が一括して管理出来る、というふうに制度が変わっていかないものだろうか、と思っています。そうすれば、間伐は進められるんです。これからは、「山を守る気がある者が、管理を任される」という風になっていかないと、森林の公益的機能を満たせなくなっていくのではないでしょうか。
 





 

















自然はみんなものなのに、森は誰かのもの、ってとこがヤッカイだよねー。
 二ッ井町についていえば、今、山林境界の正確な地図がない、というような現状です。県には森林計画図がありますが、所有者から届け出があれば地図の変更をする、という性質のものであって、登記レベルでの追跡まではしていません。地図の7割ぐらいではないですか?実情とあっているのは。民有林は個人の財産であるから、どうしてもプライバシーの問題がからんでくるのです。林界ということは別として、誰がどれだけの広さを持っているか、その所有権が譲渡されていないか、把握しているのは、役場の税務課でしょうね。固定資産税は毎年発生しているんですからね。

  二ツ井 能代山本 秋田
土地面積
18,000ha
119,000ha
1,161,000ha
森林面積
13,700ha
80,5000ha
822,000ha
林野率
76%
68%
71%
民有林面積
6,900ha
48,1000ha
445,000ha
民有林野率
50%
40%
46%
民有林人工林率
74%
65%
57%
民有林杉人工林面積
4,500ha
20,900ha
233,000ha
スギ人工林蓄積
1,000万立米
4,400万立米
61,000万立米
 
二ツ井町は林業がさかんな能代山本の中にあっても林野率が高く、しかも民有林の人工林が多い。民有林の動向がこれからの二ツ井にとっては大きな役割を果たす。  
(二ツ井町統計資料より)  

 隣町では、町が主体になって、山林の一斉調査をやりました。そうでもしないないと、実態はつかみようがないんですよね。本気で山のことをどうにかしようと思うのであれば、行政が主体となっての調査が必要です。組合には入っていない民有林もありますし、組合としては個人の所有権の部分までは立ち入れませんからね。町でやってもらわないことには、森林組合ではどうしようもないのです。ここに民有林独特のむずかしさがあるわけですよ。
 
 
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(c)モクネット事業協同組合   最終更新日:2001.03.31
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